SAKANAQUARIUM 21.1(B)-2
ひとつ前のエントリーではレポっぽくなったので、
こちらでは全体的な感想というか、ちょっと考えてみたことを。
「ライブは総合芸術」というのは一郎さんが何度か言っていて、
kikUUikiツアーのときにその通りに感じた。
オイルアートや照明の演出も、セットリストも。
ただ享楽的に踊れるだけではなく、もうひとつ上の次元で感動させる。
ただ観客が期待していることに応えて楽しませるのではなく、
観客が体験したことのない新しい音楽の喜びを提供する。
わたしはサカナクションのそんな姿勢が大好きだ。
そして、きっと今やりたいことがやれているんだろうなあと漠然と感じていた。
その、完成形にも思えたkikUUikiツアーから、武道館では更にすごいものを見せてくれた。
大きな舞台での定番の演出を使うのではなく、サカナクションらしく、一曲ごとに、もちろん全体の流れも考えてこだわっているのがわかる。
それは、身も蓋もないことを言ってしまうと予算面で出来ることが増えたということも大きいのだろうけど、
ただ豪華な演出を取って付けたのではなくて、
それくらいの規模感が等身大で合うバンドになったんだなあと感じた。
「なった」と言うと少し偉そうだけれど、確かに「kikUUiki」を経てそうなったんだとおもう。
シンシロまではイヤホンで外で聴くのにも適していたけど、このアルバムは部屋でCDで、「作品」として鑑賞するものという感じがする。
音楽知識が全くないので根拠もないのだけど。
でも実際のところ、「すごいアルバムだ」とおもうけれど再生回数は多くないのだ。
そんなアルバムだから、目が明く藍色をはじめ、ショーのような「総合芸術」の場がよく合う。
そして、サカナの曲は、すごく幅広い。…って、改めて言うのもなんですが。
リリースの関係ないワンマンは初めてになるのかな。今回は全てのアルバムから満遍なく選曲されていたのもあり、一回のライブで色んな面を見せてもらえる。
演出も自然と幅広いものになる。
そういった条件の中、武道館という会場はすごく良い相乗効果になったのではないかと。
ライブハウスだと、どうしてもステージとフロアという関係になるけれど、
武道館全体、天井まで考えられた演出になっていて、開放感と同時に一体感のある独特の雰囲気。照明を落とした演出のときとのコントラストもはっきりしていた。
武道館を武道館じゃなく感じさせられたけれど、武道館だからこそ成立した世界だったということ。
ライブハウスやフェスとは明らかに違う「サカナクションらしさ」を見せてくれたということ。
ホールとかになるとまた違うんだろうなあ。
色んな、ライブハウス以外のところで観てみたくなりました。
そして、今回の「ショー」を経て、またライブハウスに戻ったときライブがどう進化するかにも期待です。
セットリストについて。
ライブの超定番曲、フェスを含めて必ずと言っていいほど演奏されてきたナイトフィッシングイズグッドがありませんでした。
USTで語っていたところによると、これまでこの曲に頼っているところがあったけれど、次に進まなきゃいけない、フェスでも目が明く藍色をやれるようにしなければいけない、そのために作った曲なのだから、とのこと。
納得出来るけれど、そうは言っても聴きたかったというのが正直な気持ち。
一方で、二度とやらないと言った(らしい)GO TO THE FUTUREが演奏された。
“『GO TO THE FUTURE』ってタイトル通り未来へ進む曲だから、それを繰り返し歌うという行為は、未来へ進めてる事にならない気がしてて。だから二度とやらないと言ってましたけど、武道館ライブからまた未来へ進む決意の為、やらせていただきました。”(山口一郎Twitterより引用)
やらなかった曲、やった曲、その理由は同じ所にあったよう。
アイデンティティ発売時、MUSICAのインタビューで一郎さんはこう言っている。
「きっとこれが今までのサカナクションの最後の曲になると思うんです。コーラスワークとか、ギターのカッティングとか、過去に使ってきた素材を惜しみなく使ってサカナクションらしさを再定義した曲です」
「もちろん次のアルバムに対しての切り口というか、僕達の意思表示的なシングルでもあるけど、ある意味、今までの自分達への決別だと思ってて。『アイデンティティ』は『アルクアラウンド』から作ってきた僕達の雰囲気の最後の曲だと思うんですよ」
わたしはこの話を武道館公演の直前に思い出していた。
実際、次の楽曲からどれだけ変わるか、変わらないのかは想像もつかないし、この時点で一郎さん自身も見えていなかったかもしれないとおもいます。
でも、武道館をやれるだけの人気が出たというだけでなく、
この公演で一区切りとなる、大きな意味を持つライブになるのだと感じていました。
そして、まさに集大成という言葉がふさわしい、過去のアルバムからもバランスよく選ばれたセットリスト。
それにも関わらずあえて外されたナイトフィッシングイズグッドと、あえて入れられたGO TO THE FUTURE。
集大成とは言いながらも、過去を振り返るだけでなく既に一歩踏み出しているのだ。
しかし一方では、過去の定番だったAme(B)始まりが復活。
確実に前に進みながら、頑なに過去を振り切るようなことはしない。
わたしはそんな、カッコイイけどカッコつけすぎないサカナクションがすきなのです。
個人的には、一番好きなアルバム「GO TO THE FUTURE」から、
8曲中5曲演ってくれたのが、単純にうれしいだけでなくて良さが証明されて誇らしいというか(笑)、そして好きな人が増えるだろうことがうれしかったです。
またリリース関係ないワンマンやってほしいな。
次にサカナを観るのはNew Audiogramのイベントです。
フェスよりは長めの出演時間になるそうなので、どんなセットリストになるのか想像もつかなくて楽しみ。